私が近視手術を受けようと思ったのは何かのはずみでした。興味はあったし、眼鏡がなければいいと思ったしコンタクトが何だか調子悪かったし面倒くさく思ってはいました。しかし、どうして?と聞かれたら「つい、何となく」と答えかねないくらいあやふやで、そうして唐突な衝動からだったと思います。「したい!」と思ったのは確かです。安全性も、技術も、いろいろな説明もよく聞いて、自分でも調べたりして。その上で「よし!やってみるか!」と決めました。しかし、決めてから実際手術が行われるまで、やたらと日が空いてしまったため、後悔の連続でした(笑)でも、一度言い出したことを翻す勇気もなく、「見えるようになるんだ」と思ってがんばりました(大笑)

自慢じゃないですが私は絵を描くのと、本を読むのが生き甲斐の人間です。右手が駄目なら左手で、左手が駄目でも口で、足で、身体のどこかを使ってでも絵を描いたり、それが駄目なら何かを、何かを作りたいとおもうほど生き甲斐で。でももし目が見えなくなったら死ぬかもしれない、とどこかで思ってました。だって本すらも読めなくなってしまうから。それらを奪われてまで人生に楽しみが持てるほど豊かな生き方をしていなかったので、そんな人間が何を思って目の手術などを受けようと決めたのか未だに謎です。本当にはずみでした。賭けでした。

ちなみに、手術自体にそれほど不安はなかったんですが、自分の中でどうしてもどうしてもひっかかっていたのが『コントラスト視力の低下』。ようは白黒判別能力が手術を受けると少し落ちて戻らないらしい、ということでした。手術を受けるの決めてからこれを知ってどれだけ後悔したか(笑)スクリーントーンの網を見ただけでメーカーを当てれるくらいには、色の判別や明暗の見分けには自信が合っただけに「どうしようどうしよう」とパニックに。クリエイティブな人間にとってはけっこう死活問題だと思うんですよ!で、これだけが本当に心配だったので医者に聞いたくらいです(笑)ちゃんと専門の研究している医師にまで確認してもらいましたとも(爆)医師からは、「美術的感覚に影響が出ることはない、色彩感覚についても問題はない」と言ってもらえましたが。それでようやく、本当に手術を受けるんだという気持ちに落ち着きました。

というわけで、賭けの結果?(手術の翌日)


術前 R:0.03(-4.5D) L:0.03(-3.75D)
術後 R:1.5p(+0.75D) L:1.5p(+0.25D)

-------大勝利、といったところでしょうか??

ちなみに色彩感覚も全然大丈夫!自分で見て、感じる分にはまったく違和感ないですよ!



さらに、手術1週間後の視力?


術後1週間後 R:2.0(+0.25D) L:1.5(+-0D)


さらに、手術9ヵ月後の視力?

術後9ヵ月後 R:1.5(+0.25D) L:1.5(+-0D)

(2001年11月現在も私の視力は両目とも1.5見えてます。
疲れてるとぼけたりするけど大体OK。すごく調子がいいと両目で2.0。)
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ただ、ここを読んで近視手術に興味を持ったとしても大事なのは、
      • 誰でも受ければ1.5が見えるわけではないということ
      • 目の状態や近視、乱視、遠視の強さや体質等で手術を受けれない場合がある
      • まれに術後に近視が戻る場合がある
      • 合併症が起こる可能性がある
      • 保険が効かないため、全額自費

などの注意点があること。手術としてのリスクと、それをふまえた上での効果を理解した上で、手術を決めるべきだと思います。何といってもいくら不便で、苦痛を感じているとしても、コンタクトや眼鏡を使えば見えるわけですから。無理に手術する必要なんてないんです。自分にとってその「不便さ」や「苦痛」がどれくらいのものか、解放されたらどんな利点があるのか、高いお金を払ってまでする価値があるのか。そして、残りの人生をずっと眼鏡やコンタクトと付き合って生きていくのか、裸眼の世界を満喫するか。それは本当にそのひとの価値観ですから。ただ、後悔するような選択はしたくないですね。目に代わりなんてないですし、一生も一度きりでやりなおしなんてきかないんですから。今だけが今です。そしてまだある「これから」を考えた選択を大事にしてほしいです。とりあえず私はせっかく手に入れた裸眼の人生、せいぜい楽しんでいこうと思います!これからは風に舞うホコリに怯えることも、レンズのせいで結膜炎に悩まされることも、うっとおしい手入れも、泳ぎに行ってまわりが全く見えなくて途方にくれることもないんだから!(笑)

(ちなみに私が受けた近視手術は「LASIK(レーシック)」という最新の技術を駆使したものです。角膜をうすく削ってフタを作ったうえで、角膜実質にエキシマレーザーをあてて削ることで近視を矯正し、最初に作っておいたフタを戻す。削ったところにフタをするため治りが大変早く、視力がでるのが非常に早いです。痛みもほとんどありません。ダイヤモンドメスを使用する「RK」、同じくエキシマレーザーを使用するがフタは作らないタイプの「PRK」に比べると一番精度が高いんじゃないでしょうか。かなりの強度近視にも対応してますし。しかしその分、お値段も高いですけど)

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--運命の日というよりは革命の日 -手術当日レポート-

手術は午後からでした。

お昼を食べ終えてやることもなかったので本を読んでいると、「あ、そんなことして!目を疲れさせちゃ駄目なんじゃないの?!」と言われた。なるほど、一理ある。しかしその小説は面白かった(「星界の紋章」森岡浩之著)。私は続きが読みたくてしょうがなかったが、みんなの視線は『駄目』と言ってたのでしぶしぶ読むのをやめた。うう、続き…(泣)

いよいよ手術の時間が近付いてきたので、医院の病室(休む部屋)に案内される。もう1人目の手術が始まっていたためしばし待つ。…しかし5分も経たないうちに暇を持て余し、さっきの小説の続きが気になり出した(爆)…読む。ナースが入って来た時に慌てて隠したのは言うまでもない(笑)

手術前の点眼(2種類。ひとつは消毒、ひとつは麻酔)をしたところで手術室の方へ移動。たったこれだけの麻酔(2滴)?!と慌てたら「手術室に入る前と、手術直前にもさします。白内障の手術もこれだけの目薬でするので大丈夫ですよ」と言われた。白内障でさえ大丈夫なら近視手術も大丈夫だろうとちょっと安心。

手術は手術台でするのではなくイスである。歯医者のイスに似ているが、機能としては美容院のイスを連想して欲しい。ようは倒れて水平になるわけだ。しかしイスに乗ったがいいが、私は背が高い方ではないので枕に合わせようとすると身体をにじにじとずりあがってあわせることになった。エキシマレーザーの機械はけっこうな確率で外国製なので。規格も外国人サイズなのだろうか?とにかく私には大きかった。なんとか頭をのせるとゆっくりとイスが倒れてゆく。身体の半分くらいまで毛布をかけてもらった。白い天井が見える。イスを倒すときもナースが丁寧に声をかけてくれる。担当のナースがかわるがわるこちらをうかがってくれて、気恥ずかしくて何だか笑いそうになった。人事みたいな感じだった。

そのあと、頭を固定するのと、レーザーの機械に対して水平になるように、枕の高さを空気で固定していた。それが完了するとイスをくるりと回転してセッティング。ガチャン、という音と共に目の真正面がレーザーの機械になった。目の前には黒く暗いホールと緑色におだやかに点滅する光が見えた。いよいよかと思ってどきどきした。

担当医は私の頭の向う側に陣取った。まずは目の周りの消毒から。それはもうごしごしと消毒される(2回)。

ここから先の記憶はちょっとあいまいで順番が違う箇所があるかもしれません
(特に点眼、洗眼、消毒)

そして再び点眼。確か2種類で、後にさしたほうが麻酔だったと思う。

まず、まぶたをテープで止められた(仮止め)。上まぶたを2本、下を1本。その後顔に布がかけられる。これは手術する方にだけ穴が開いているので、手術しない方の眼は布に隠れて見えなくなる。そしてそのさらに上に白っぽいビニール製のようなシートが見える方の眼(手術眼)にかけられる。そして!これにはさみが入る!つまりは切れ目を入れて、眼の大きさに合わせたサイズに穴を開けるわけだけど、これが恐いって!目の前数cmどころか数ミリですから!先に手術を受けた友人から「あれが一番恐かった」と、聞いてたから多少耐えられたけど、直視するのはやっぱい恐かったので反対側の隠れてる眼に意識を集中したため、まともに見ずに済んだ。見えたのは白い布を通した影だけ(笑)

ちなみに麻酔がきいてくると不思議に瞬きはあまりしなくなる。

開瞼器(かいけんき)が眼にセットされる。これはまぶたを押さえて眼を大きく開けるためのもの。ちなみに私は手術全てを通してこれが一番つらかった。目はけして小さい方じゃあないのに、開き方が足りなかったらしくけっこう強くひっぱられてしまい、これが少々痛かった。ひっぱるというよりこじあける感じ。この状態で黒めの大きさをものさしのようなもので測っていたと思う。そしておもむろにもうちょっとひらかされた(泣)どうやらフラップを作る際にはもうちょっと開いていた方がよいらしい。ナースが「痛いですか?」と聞いてきたので手で合図(手をにぎっててもらったので)。そして目にマーキング(印付け)をする。目をぎゅっと押さえられた時、一瞬視界がゆがむ。痛みどころか感覚もないみたいだ。

そのあとフラップ(角膜を薄く削ったフタ)を作る作業に。大きく開けられた目にギュッと押し付けられる感触。多分サクションリング(目に圧力をかけてフタを作りやすくする)をはめたのだろう。その後「吸引します」という声と共にカウントダウンが始まった。手術者の体験談ではこの吸引が痛い人が多いという話だったので緊張した。左は痛くなかったが、右目の時は少し痛かった。強く引っ張られて締め付けれれるような感覚の強いのが数秒間続く。右の時は痛いと思ったので手で合図、ナースが「大丈夫ですよ、もう少し」と声をかけてくれた。吸引はわりとすぐに終わったが、今度はフラップ作り。近視手術のヤマ場である。

実はこのとき、吸引時に目に圧力がかかるとブラックアウト(暗転)の状態になるため、視界はまっくらで何も見えません(笑)吸引のカウントが進むにつれて視界が暗くなっていく。ただナースから「大きな音がしますがまっすぐ前を見て下さいね」という指事があるのでとにかくなんとなく上(真正面)を見ていた。そうするとマイクロケラトーム(角膜のフタを作るためのカンナのような機器)がギュィーンという音がして、重みが右から左へ移動するのがわかったが痛みなどはまったくない。本当に重みだけ。これでヤマは越えたというのだから驚きだ。「はい、きれいなフラップができました」という医師の言葉にほっとする。
サクションリングを外され、同時に開瞼器もゆるめてもらう。これでやっと少し落ち着けた。最初に聞かれた時にやせ我慢せずに痛いと言っておいてよかったと思った(笑)フラップ(フタ)をめくられるととたんに視界がぼんやりした感じになる。めくられていくのが見え方でわかる。このとき痛みとか感覚はない。
ついにエキシマレーザーを照射する段階に来た。ここまで来るとあとは目を動かさないだけだ。目の真正面には時々ちらりと見える緑色の光と、常に見えるけどなんだかゆらゆらと水面のように揺れるちょっと広い範囲の赤い光が見えた。「赤い光をじっと見ていて下さい」と医師に言われて、必死に見る。しかし、光の範囲は広いのだ。どこ見ればいいの?(泣)とりあえず「このあたり!」と決めたとこを見るようにする。レーザーの照射時間は25秒だったと思う。カウントが始まった。赤い光はじっと見ようとすると、余計に範囲がひろくて1つの点ほどには集中できなくて本当に見れているのか不安になる。レーザーの音がすぐ近くで「ジジッバジッ」といっている痛みも感覚もまったくないが匂いがわかった。「ああ。こげてるこげてる」と思った。肉がこげるというかビニールをあぶった時のような感じの匂いだった(笑)今思うと緊張しすぎて余裕があったのかもしれない。とにかく真剣に前を見た。「あともう少し。いいですよ、そのままそのまま」という医師の声をとにかく信じた。レーザーの照射は以外と楽だった。実にあっけないものだったのだ。

目が動かなかったがとにかく心配だったが、あとで見ていた人に聞くと動いてなかったようなのでよかったよかった。

先ほどのフラップ(フタ)を戻す。余計にぼけたような、はっきりしたような感じ。

三分間、カウント有りでフラップを戻した時にゴミが入ってないか、しわがよってないか確認。この時にも目を洗ったり、目薬をさしたりした。この三分間が終わったところで手術は終了。

ちなみに終わるとイスをゆっくり起こされて自分の足で歩いて休憩室(病室)まで行く。一部友人は「包帯でぐるぐるまき」だと思ってましたがそんなことはまったくないです、残念ながら(笑)手術した目はテープで軽く止められ、開いているのは反対側の目だけの状態。30分後に診察があるまで触らないようにして、休ませる。部屋でごろんと横になって(あおむけ)両目を閉じてじっとしてた。痛みとかは全くなかった。

視力に関しては、術後30分くらいの段階で、眼鏡の時よりよく見えてたからきっと0.4以上はあったと思う。視力は徐々に見えやすくなる。目に見えて視界が明るい(でもまぶしい)。上を向くのはけっこうつらいが、下を向くのは楽だった。両目の手術が終わり、診察も終わって少し休んだところで家族に迎えに来てもらう。流石に手術した当日は車の運転ができないからだ。

家に帰ってからは目を開けていてもしみて涙がでてくるので、寝てしまった。2時間くらい寝て、起きたらずいぶんすっきりしていてしみる感じもおさまり、目もすっきりと開いた。明らかに見え方が明るい。

そして、夜寝る時は目を無意識にこすったりしないようプラスチックの保護カバーをつけて就寝。しかし、次の日、目が覚めて片方取れててあせった(笑)


術後のひとりごと


後で看護婦さんに聞いた話だが、私は開瞼器のときに「痛いですか?」と聞かれ、素直に「痛い」と合図した。しかしここで「痛いって言わなかったらきっとそのままでしたよ。痛い時はちゃんと痛いといったほうがいいんです」と言われた。もしあそこでやせ我慢していたら、フラップを作り終わっても緩められることなく作業が続けられたんだろうか、言ってよかった。我慢なんかしなくてよかった!私は心の底で自分の弱さ誉めたたえた。というか、痛くない人は本当に痛くないんだよなあ。個人差があるとはいえ、痛くない方がいいに決まっている。こればっかりはその瞬間までわからないのだ。まあ、できることは力入れないことぐらいのものですがね。


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