闇の末裔の少年と 輝の末裔の少女が 滅びゆく都で出会う…


あらすじ

広々とした野を風が渡り、馬の群が駆ける板東。長年続く倭の帝と北の蝦夷の戦にさらされている東の果ての国で、郡司の長男の忘れ形見である阿高は、同い年の叔父藤太と一心同体のようにして17まで育った。だが、藤太には決して阿高に語らない秘密があった。それは阿高が眠ると、その口を借りて予言する謎の巫女の存在。その声は誰にも存在を話してはならないと告げる。

都の少将・坂上田村麻呂が、軍事検閲のため板東を訪れる直前に、巫女は再び語る…「坂上に見つかるな…二度と阿高に会えなくなるよ」と。一方阿高は自分は何者なのか、決して語られることがない自分の母親の素性は何なのか、と悩んでいた。そんな阿高の前に、蝦夷達が現れて告げた…「あなたは私たちの巫女姫、小さな火の女神チキサニの生まれ変わりだ」と。

母を知りたい思いに惹かれ、蝦夷の国へと足を踏み入れる阿高。父から「これは阿高のものだ」と手渡された勾玉を携えて、必死に阿高を追う藤太と仲間達。そして「私は阿高を探しに来た」と公言する坂上少将の動機とは…?

一方、遠く離れた長岡の都では物の怪が跳梁し、皇太子安殿皇子が病んでいた。「夜明けに東の空から、薄紅の衣をまとい、勾玉を携えた天女が舞い降りる。そして都を救ってくれる…」病んだ兄の夢語りに胸をいためる皇女苑上。皇女の身では兄を助けることも、弟の加美野皇子を守ることもできない、と考えた苑上は、男装の女性武官・藤原仲成に導かれて自分も少年の姿をとり、弟の身代わりになろうと決意する。

仲成は「艮(東北)から近付いてくる『悪しき者』を都に入れてはならぬ」と語り、軍勢を率いて立ち向かう。やがて軍からはぐれた苑上は、物の怪に追われるも不思議な神馬に救われる。馬が姿を消すと、苑上の前にいたのは板東から来た少年達だった…



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